地球環境の保全

Global Environmental Conservation

当社グループは、事業活動、製品、サービスが地球環境に与える影響を考慮した環境保全に努め、継続的な改善を行います。

環境基本方針、環境中長期計画

環境基本方針

近年、気候変動に関連する問題のみならず、ステークホルダーの環境に係る当社グループへのニーズや期待はますます大きくなっており、かつ多様化しています。当社グループは、このような状況を考慮した上で、脱炭素社会の実現や循環型社会への貢献は実践しなければならない社会的責任の一つであると考えています。

当社グループでは、環境面で果たすべき社会的責任を明確にし、持続可能な社会の実現に貢献するために、グループ全体における環境に対する取り組みの基本的な考え方を示した「環境基本方針」を制定しています。また、グループ全体における環境負荷の低減や環境汚染事故の未然防止を推進するための環境マネジメント体制を構築しています。

環境基本方針

  • 基本理念

    GS YUASAは、社員と企業の「革新と成長」を通じ、人と社会と地球環境に貢献します。「電池で培った先進のエネルギー技術」で脱炭素・循環型社会の形成に向け役割を果たし、持続可能な社会を実現します。

  • 行動指針
    1. 法令・要求事項順守

      環境事故の防止、法的要求事項の順守、化学物質使用リスク低減に努め、環境マネジメントシステムを継続的に改善し環境パフォーマンスの向上を目指します。

    2. 環境負荷低減

      地球温暖化を阻止するため温室効果ガス排出量と水使用量の削減を、サプライチェーン全体で行います。

    3. 資源有効活用

      循環型社会に貢献するため、製品ライフサイクル全体において、原材料削減、再生材活用、廃棄物減量など資源の使用量を最少化します。

    4. 環境配慮製品

      エネルギーの新たな形を未来に向け作り続けるため、脱炭素・循環型社会の形成に貢献できる製品を生産・開発します。

    5. 情報公開

      適切に環境情報をステークホルダーに開示し、積極的にコミュニケーションを行い社会との共生に努めます。

    6. 人材育成

      当社グループ全体で、脱炭素・循環型社会形成に向けた責任を果たせる企業を目指し、将来を担う人材を育成します。

環境中長期計画

当社グループの環境基本方針に係る重点事項については、持続可能な社会の実現に貢献することを目的とした環境中期計画を策定し、その実施状況を管理しています。2019年度以降は、中期経営計画に環境目標を組み込むことによって、グループ全体の重要な経営課題に対応する事業戦略の1つとして推進しています。

また、脱炭素社会への移行に向けた国際社会の動向や国内政府のカーボンニュートラル目標を考慮して、長期的なCO2排出量削減目標を2021年度に設定しました。今後も、当社グループは、気候変動の緩和に対する取り組みを積極的に推進して、環境長期目標の達成を目指していきます。

環境中期目標(2019〜2022年度)

横スクロールで全体をご覧いただけます

項目 2022年度 2021年度 基準年度
(2018年度)の
実績値
備考
目標 計画 実績
CO2排出量 6.0%以上削減
(2018年度比)
4.0%以上削減
(2018年度比)
8.1%削減 655,291t-CO2 組織境界(適用範囲):財務支配力基準を採用(販売会社や営業所は対象外)、削減目標対象の排出量割合:100%
水使用量 8.0%以上削減
(2018年度比)
6.0%以上削減
(2018年度比)
10.3%削減 6,667,317m³  
全製品の売上高に占める
環境配慮製品の販売比率
35.0%以上 34.0%以上 36.5% (31.9%)  
鉛蓄電池の鉛原材料に占める
再生鉛量の比率
35.0%以上 35.0%以上 55.9% (27.5%) 主要製品における再生材料の使用率

対象範囲:国内7事業所、海外20事業会社

新型コロナウイルスの影響により、当社グループの中期経営計画の最終年度を2021年度から2022年度に変更したため、本目標も2022年度まで期間延長しています。

環境長期目標(2030年度)

横スクロールで全体をご覧いただけます

項目 目標値
(2030年度)
基準年度 対象範囲
CO2排出量 30%以上削減 2018年度 国内7事業所、海外20事業会社

環境マネジメントシステム

環境マネジメントシステムの運用

当社グループでは、国際標準規格であるISO14001規格に準拠した環境マネジメントシステムを構築・運用しています。

各事業所では、環境マネジメントシステムの体系的なしくみであるPDCAサイクル(計画→実施・運用→パフォーマンス評価→改善)を効果的に活用することで、環境パフォーマンスを継続的に改善しています。

PDCAサイクル

図:PDCAサイクル

組織体制

当社グループの環境マネジメントにおける組織体制は、当社社長を「環境管理最高責任者」とし、直属に実務責任者として「環境担当役員」を置いて、グループ全体の環境管理体制を統括しています。環境基本方針を含むグループ全体の環境に係る戦略については、経営会議にて審議・決定されます。

また、国内事業所や海外グループ会社に対する環境マネジメント体制を整備することによって、効率的で迅速なグループ内コミュニケーションを実現する体制を整備しています。2018年度からは、主要な国内生産事業所において、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の認証範囲を事業所単位からグループ単位に統合することによって、当社グループの環境目標を戦略的に達成する体制を構築しています。

国内外の生産拠点における
ISO14001規格の認証取得率
100%

組織体制の概要

図:組織体制の概要

国内事業所のうち、7事業所はISO14001認証を統合

海外グループ会社のうち、19事業所がISO14001認証を取得して運用

環境監査

当社グループの各事業所では、環境方針や環境目標の達成状況、環境マネジメントシステムの運用状況などを確認する内部監査を実施して、パフォーマンスおよびシステムの改善につなげています。また、環境マネジメントシステムの適合性および有効性を把握するために環境認証機関による外部審査を受審しています。

内部監査

社内外の研修を受けた資格を有する内部環境監査員が次の状況を確認しています。

  1. 環境関連法規制などの順守状況(順法性監査)
  2. 環境マネジメントシステムの維持管理状況(システム監査)
  3. 環境目標の達成程度(パフォーマンス監査)

外部審査

ISO14001規格に基づく環境マネジメントシステムの維持管理状況およびPDCAサイクルの機能状況などを受審した結果、全事業所がISO14001規格の認証を継続しています。第3者の視点による環境管理活動の評価や改善ポイントなどの情報を活用して、環境マネジメントシステムの継続的改善を図っています。

環境教育

当社グループでは、環境マネジメントシステムの運用を維持向上させるために、各種の環境教育を実施しています。また、環境リスクを顕在化させないための教育訓練も定期的に実施しています。

環境一般教育

従業員教育 各部門では、すべての構成員に対して、環境方針の達成に向けた自分の役割を認識させる教育を実施しています。
新入社員教育 新入社員に対して、当社グループの環境管理の基本的な考え方を認識させる教育を実施しています。

環境専門教育

内部環境監査員研修 各事業所では、環境マネジメントシステムの継続的改善を図るため、内部環境監査員の養成およびレベルアップ教育を実施しています。
緊急時対応訓練 各部門では、環境に著しい影響を及ぼす可能性のある業務に従事する構成員に対して、想定される緊急事態に対応するための訓練を定期的に実施しています。

環境コンプライアンス管理

当社グループでは、順守しなければならない環境関連法規制などを定期的に見直し、モニタリング活動などを通じて、法令順守に係る運用を適切に管理しています。

また、鉛などの有害物質を製品に使用しているため、種々の環境関連法規制を順守して事業活動を行うことはもとより、使用済み製品の再資源化システムの運用に係る法規制などについても十分考慮しています。

2021年度に、環境関連法規制に係る訴訟、罰金、過料などは発生していません。

環境リスクマネジメント

当社グループでは、ステークホルダーからの多様化する環境ニーズを考慮した環境リスクマネジメントを推進しています。また、各事業所では、環境関連の法令や地域の条例・協定に基づく規制基準より厳しい自主管理基準を設定した運用管理によって、環境汚染(大気汚染、水質汚濁など)の予防を図っています。

環境に著しく悪影響を与える可能性のある業務に対しては、ハード対策(見える化、流出防止、除害装置の設置など)やソフト対策(設備点検、監視・測定、運用手順の徹底など)を講じることによって、環境汚染リスクの低減を実現しています。

また、万が一、緊急事態が発生した場合に備え、被害を最小化するための緊急時対応訓練を定期的に実施しています。

2021年度に、重大な環境汚染に直結する緊急事態が発生した事業所はありません。

適切な環境情報の開示

当社グループはCDP*1に対応した環境情報を開示しています。CDPは、機関投資家や顧客のニーズに基づき、企業に対して環境戦略情報の開示を求めています。また、気候関連課題が重要な経営課題の1つであると認識しているため、TCFD*2フレームワークに基づく気候関連の情報開示に取り組んでいます。

温室効果ガス排出量(エネルギー使用量を含む)については、第三者検証*3によってデータの信頼性を確保した情報を開示しています。また、水セキュリティに対するパフォーマンスや対応策などの情報開示も進めています。

今後も、さまざまなステークホルダーのニーズに対応した適切な環境情報の開示に努めていきます。

1企業の環境問題(気候変動、水セキュリティなど)への取り組みに関する世界標準の情報開示プラットフォームであり、企業の情報開示に基づいて算出したスコアを活用して投資家などが評価するしくみを構築しています。

2G20の要請を受けて金融安定理事会が設立した気候関連の情報開示や金融機関の対応方法を検討する組織

3SGSジャパン株式会社による第三者検証を受審しています(スコープ2検証対象データ:マーケット基準で算出したCO2排出量)。

第三者検証意見書(2021年度)
TCFDへの取り組みの詳細はこちらをご覧ください

環境負荷低減への取り組み

環境に配慮した製品の設計

当社グループの製品は、製品ライフサイクルの各段階(調達、製造、輸送、使用、廃棄)において、環境に何らかの影響を及ぼしています。当社グループでは、製品ライフサイクルにおいて発生する環境負荷(資源の消費、温室効果ガスや廃棄物の排出など)を低減するために、原材料の選定、分解や分別の容易性、省エネルギー化、適切な表示などを考慮した設計を通じて、製品パフォーマンスの向上を図っています。

製品の設計における環境アセスメントでは、設計部門は設計標準に従った製品の設計を行い、製品ライフサイクルの各段階における環境影響評価に対して、DR(デザイン・レビュー)会議で製品の環境適合性を審査します。審査結果が環境影響評価基準を満たさない場合には、設計標準を見直して製品の設計を再度行います。その際、設計部門だけでなく、エンジニアリング、マーケティング、購買、品質、環境などに関係する部門の適切な専門性を活用することによって、環境適合設計の効果が最大限に発揮できるようなコミュニケーションを図っています。

環境アセスメント項目

  1. 省エネルギー
  2. 減容化
  3. リサイクル性
  4. 分解性
  5. 分別処理容易化
  6. 安全性と環境保全
  7. 材料選択
  8. メンテナンス性
  9. エネルギー効率
  10. 再使用(寿命延長)

環境アセスメントフロー

図:環境アセスメントフロー

流通している製品への情報の反映

市場に流通している当社グループの製品に対するお客様からのご要望などの重要な情報についても、現行製品の設計変更や将来の新製品の設計に活用することによって、環境適合設計の価値を高めています。製品のアフターサービス・返品・クレームなどに係るステークホルダーからの情報を、製品の環境パフォーマンスを向上する貴重な資源として活かす運用を推進しています。

製品含有化学物質管理

当社グループでは、製品に含まれる化学物質の管理基準を明確に示した「化学物質管理ガイドライン(製品含有)」をもとに、環境負荷の少ない製品を提供する取り組みを行っています。本ガイドラインは、当社グループのグリーン調達基準書に規定している納入材料に含まれる化学物質調査の一環として実施していくもので、当社グループが生産および販売する製品を構成する主材料、副材料、部品などに含有される化学物質の中で、対策を講じるべき物質を禁止物質ランクと管理物質ランクに分類するなど、製品含有化学物質の把握と管理を行うことを目的としています。当社グループは、主材料、副材料、部品などを納入しているサプライヤー様とともに、本ガイドライン対象物質の把握と管理を徹底することによって、製品の環境品質の向上に取り組んでいます。

環境配慮製品の普及促進

当社グループでは、地球温暖化の抑制に貢献する製品を環境配慮製品と定義して、当該製品の開発および普及を促進する活動に取り組んでいます。

2019年度からは、当社グループの中期経営計画に環境配慮製品に対する販売目標を組み込むことで、お客様に提供する製品を通じた気候変動への対応を事業戦略の一環として取り組んでいます。

当社グループにおける環境配慮製品の事例

対象 説明 対象製品の例
アイドリングストップ車用バッテリー エンジン停止中のガソリン消費をなくして燃費向上を図るアイドリングストップ車用のバッテリー
写真:アイドリングストップ車用バッテリー
蓄電システム 再生可能エネルギーを有効活用するシステム(パワーコンディショナ、リチウムイオン電池など)
写真:蓄電システムその1写真:蓄電システムその2
車載用リチウムイオン電池 温室効果ガス削減に大きく寄与するハイブリッド車用や電気自動車用のバッテリー
写真:車載用リチウムイオン電池その1 写真:車載用リチウムイオン電池その2

画像をクリックすると拡大します

製品に使用する再生鉛の利用率向上

当社グループは、主力製品である鉛蓄電池の主材料として使用する鉛の再生利用率向上に取り組んでいます。

2019 年度からは、中期経営計画に鉛の再生利用率に対する目標を組み込み、事業戦略と一体となった循環型社会の実現への貢献を目指しています。

当社グループでは、拡大生産者責任に基づくリサイクルシステムの構築と運用により、お客様などで使用済みとなった当社製品の再資源化に取り組んできました。今後は、当社製品における再生材料の利用促進についても強化していきます。

全社的なエネルギー管理の推進による温室効果ガス排出量の削減

当社グループは、脱炭素社会への移行に伴う社会的な変化(ステークホルダーからの温室効果ガス排出量の削減要請、化石燃料の使用に対する炭素価格の付加、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトなど)に対応するために、事業活動に伴うエネルギー管理のしくみを継続的に改善して、温室効果ガス排出量の削減を推進することが重要であると考えています。

当社グループでは、世界各国の生産活動におけるCO2排出量の削減目標を中期経営計画に組み込むことで、事業戦略と一体となった脱炭素社会や持続可能な社会に貢献する取り組みを推進しています。また、2021年度からは、長期的なCO2排出量削減目標(2030年度までに2018年度比30%以上削減*)を推進するための全社的なプロジェクト(省エネ・再エネプロジェクト)を立ち上げました。本プロジェクトでは、省エネルギー活動の推進、自社工場への太陽光発電設備の導入、市場からの再生可能エネルギーの調達に取り組んでいます。また、各々の事業所やグループ会社においても、エネルギー管理体制を構築して、省エネルギー活動や再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みを進めています。

当社グループは、持続可能な脱炭素化社会への移行に対する企業の役割を果たすために、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進していきます。

当社グループは、パリ協定に整合した温室効果ガス排出量の削減を目指しているため、CO2排出量を原単位ではなく、総量で管理しています。

省エネ・再エネプロジェクトの主な活動(2021年度)

横スクロールで全体をご覧いただけます

区分 項目 主な取り組み
省エネルギー活動の推進 設備更新基準の見直し 効果的な設備更新計画を策定(設備管理台帳の活用)
生産工程の改善 ●蓄電池充電プロセスの改善、
●充電設備の改良に向けた検討
効率的な生産設備の利用 設備稼働状況に対する定期点検を徹底
自社工場への太陽光発電設備の導入 太陽光発電設備の導入計画の実施、検討 ●(株)ブルーエナジーに太陽光発電システムを設置
(定格容量:250Kw、想定削減量:162t-CO2/年)、
●国内事業所や国内グループ会社におけるメガソーラーの導入を検討
太陽光発電設備の導入に向けた調査 国内事業所や国内グループ会社の全11拠点で設備導入可能性を調査
市場からの再生可能エネルギーの調達 再生可能エネルギー由来の電力の調達 京都事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替え(2021年11月より年間100GWh相当を調達、2021年度削減効果量:19,201t-CO2
再エネ電力証書による電力の調達 国内外の再エネ電力証書の購入(31GWh相当、2021年度削減効果量:22,536t-CO2

自社工場における再生可能エネルギーの利用状況(2021年度)

横スクロールで全体をご覧いただけます

生産拠点 区分 電力量(MWh)
日本 (株)GSユアサ 京都事業所 自家発電 98
外部調達 37,211
(株)GSユアサ 茨城 外部調達 4,573
イギリス GS Yuasa Battery Manufacturing UK Limited 自家発電 85
タイ Siam GS Battery Co., Ltd. 自家発電 899
Yuasa Battery (Thailand) Pub. Co., Ltd. 自家発電 1
GS Yuasa Siam Industry Ltd. 自家発電 1,199
ベトナム GS Battery Vietnam Co., Ltd. 自家発電 170
インド Tata AutoComp GY Batteries Private Limited 自家発電 1,714
パキスタン Atlas Battery Ltd. 自家発電 266

物流における省エネルギー活動

当社グループでは、製品ライフサイクルにおける環境負荷低減の取り組みの一つとして、貨物輸送における省エネルギー活動を推進しています。

物流に係る貨物輸送量、エネルギー使用量、CO2排出量などを把握するしくみを構築して、物流拠点の統合による拠点間輸送量の削減やトラックから鉄道コンテナなどへ輸送方式を変更するモーダルシフトなどの省エネルギー対策を実施しています。

また、当社グループでは、4シリーズの自動車用・バイク用電池において、エコレールマーク制度*の認定を受けています。本商品をお客様にご購入いただくことで、お客様と企業が一体となって環境負荷を低減する活動を実施しています。

当社グループは、積極的な鉄道貨物輸送を活用することによって、環境に配慮した物流を推進しています。

製品などの流通過程において環境負荷の少ない鉄道貨物輸送を積極的に活用している企業や商品を公益社団法人鉄道貨物協会が認定する制度

写真:当社グループのエコレール認定商品の一例

当社グループのエコレール認定商品の一例

水セキュリティへの取り組み

当社グループでは、電池材料である電解液の希釈や充電工程における電池の冷却などの用途において、良質な淡水を多量に使用しています。水資源が事業活動を継続するために重要な天然資源であるため、品質を確保した淡水の確保や水使用量の削減などに取り組むことが重要であると考えています。そのため、当社グループでは、世界資源研究所(WRI)が公表している水リスク評価ツールや気候関連シナリオ、ならびに当社の環境影響評価結果を活用して、生産拠点における水リスク(洪水、渇水、水ストレスなど)を評価しています。特に、水ストレスが高いと評価した生産拠点(トルコ、タイ、インド、パキスタンに所在する6拠点)の取水量は、全生産拠点の21%を占めています。当社グループは、水ストレスへの対応を含め、限りある水資源を有効に活用するために、世界各国の生産活動における水使用量の削減目標(2022年度までに2018年度比8%削減)を中期経営計画に組み込むことで、事業戦略と一体となった取り組みを推進しています。なお、国や地方自治体が行う取水制限などに対しても、適切に対応しています。

また、鉛蓄電池の生産工程では、有害物質(鉛など)を含む水が排出されます。当社グループは、このような排水が事業所の周辺環境に悪影響を与えないように、適切に排水を処理する重要性も認識しています。そのために、法規制や地域協定に基づく排水基準に確実に適合するように、規制基準より厳しい自主管理基準を設定した排水管理を行っています。

当社グループは、事業活動に必要な水の適正な確保や、排水に伴う事業所周辺の環境汚染といった水リスクへの適切な対応などを通じて、水セキュリティへの取り組みを推進するとともに、水資源の持続可能な利用の実現に貢献していきます。なお、水災リスク(洪水などによる自社工場の操業停止やサプライチェーンの分断など)については、TCFD提言に基づく気候変動関連リスクとして対応しています。

水セキュリティへの取り組みの例

横スクロールで全体をご覧いただけます

区分 項目 取り組み事例
水の利用 水の再利用 生産工程で使用した水を循環利用
排水の処理 排水管理 規制基準より厳しい自主管理基準による運用管理の徹底、排水処理施設の定期的な維持管理
地下浸透防止 排水処理施設に対する防液堤の設置や床面の不浸透化
緊急事態への対応 漏水を想定した緊急時対応手順の確立および訓練

TOPICS

雨水処理水の再利用

当社グループでは、工場内での⽔の循環利⽤や節⽔などに取り組むことによって、⽔の効率的な利⽤を推進しています。

群馬事業所では、工業用水ろ過装置の逆洗水や雨水などを雨水処理設備で適切に処理した水を事業所内で再利用することで、工業用水使用量を削減する活動に取り組んでいます。この取り組みによって、約1,500m3/年以上の工業用水使用量の削減を目指しています。

写真:雨水処理設備

雨水処理設備

大気汚染の防止

当社グループは、地域住民の健康被害防止や生活環境保全を図るために、事業活動に伴い大気に排出される物質を適切に処理することが重要であると考えています。そのために、国際標準規格に適合した環境マネジメントシステムを活用して、ばい煙、粉じん、揮発性有機化合物などに関する法規制や地域協定に基づく大気排出基準に適合する運用を徹底しています。また、適切な大気汚染防止対策(集塵機の設置、関連設備の維持管理など)を講じることによって、事業所周辺に大気汚染に伴う悪影響を与えないように取り組んでいます。なお、国や地方自治体の大気汚染基準に関する更新情報については、定期的な監視や適切な対応を講じています。

廃棄物管理

当社グループは、循環型社会の実現に貢献するために、資源の有効利用や3R(Reduce:廃棄物の発生抑制、Reuse:再使用、Recycle:再資源化)を推進することが重要であると考えています。また、当社グループの主要製品である鉛蓄電池は原材料に有害物質(鉛など)を使用しているため、生産工程で発生する廃棄物を適正に処理する重要性を認識しています。

当社グループでは、工程内不良の低減化を図る品質改善活動を推進することで、廃棄物(有害廃棄物を含む)の発生抑制に繋げています。また、生産工程で発生する原材料ロス(鉛くずなど)を再使用することによって、廃棄物発生量を削減する活動に取り組んでいます。再資源化に向けては、資源リサイクル率を向上させる活動に取り組んでいます。また、不適切な廃棄物処理(不法投棄など)を発生させないために、法令に基づく廃棄物の適正処理を確実に実施するしくみを運用しています。

資源の有効利用に向けた取り組みの例

  • 廃棄物の分別ルールの徹底
  • リサイクル業者の適切な選定
  • 原材料ロスの再使用

廃棄物の適正処理を確保する運用の例

  • 廃棄物の適正管理を推進する社内体制の確立
  • 廃棄物の分別・保管ルールの徹底
  • 廃棄物処理委託業者に対する定期的な現地調査
  • 廃棄物処理実務担当者の育成(定期的な廃棄物教育の実施を含む)

廃棄物関連推移データはこちらをご覧ください(再資源化量、最終処分量)

使用済み製品の再資源化

当社グループは、使用済みとなった当社製品の再資源化システムを構築・運用することが、循環型社会を推進するために重要であると考えています。そのため、当社グループでは、広域認定制度を活用した使用済み製品の適正処理および再資源化に係る取り組みを推進しています。

広域認定制度とは、製品の製造事業者が市場で使用済みとなった製品の再生や廃棄処理に自ら関与することで、効率的な再生利用や処理・再生しやすい製品設計へのフィードバックを推進するとともに廃棄物の適正な処理を確保することを目的とした廃棄物処理法上の制度です。

当社グループは、2008年1月に産業用電池および電源装置に係る広域認定を環境省より取得し、2009年1月以降の受注物件より当該認定による再資源化システムの運用を本格的に開始しました。運用開始後も、対象製品の拡大や運用ルールの見直しなどの改善を実施して、使用済み産業用電池を確実かつ適正に処理できるしくみを確立しています。

今後も、顧客サービスの向上と使用済み製品の再資源化および適正処理に向けて、より効果的な広域認定制度の運用を推進していきます。

使用済み製品の再資源化推移データ(産業用電池、電源装置)はこちらをご覧ください

TOPICS

廃棄物排出量の削減に向けた取り組み

当社グループでは、生産工程から排出される有害物質を含む廃棄物(鉛含有汚泥、廃アルカリなど)のみならず、非有害廃棄物(木屑、廃プラスチックなど)の排出量を削減する取り組みを推進しています。株式会社 GSユアサ茨城では、製品出荷時に使用する木製パレットの小型化を図る継続的な活動によって、2021年度の廃木製パレット排出量を約5.8t削減しています。

写真:小型化した木製パレット

小型化した木製パレット

化学物質排出量の把握

現在、当社グループの各事業所で使用している化学物質の中にはPRTR制度*の対象物質も含まれています。当社グループでは、有害物質の管理を環境管理活動の中に組み込んで、環境リスクの低減化対策の実施および関連する法令順守状況を定期的に評価しています。

PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)

「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律」により、有害性のある化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所外に運び出されたかというデータを把握し、集計、公表することが事業者に義務付けられています。PRTR制度の届出対象物質は、第1種指定化学物質(人の健康を損なうおそれまたは動植物の生育に支障を及ぼすおそれのある物質)です。第1種指定化学物質のうち、発がん性があると評価されている物質は、特定第1種指定化学物質として区分されています。

化学物質排出量データはこちらをご覧ください

TOPICS

生物多様性に向けた取り組み

当社グループでは、地域の生物多様性保全に向けた取り組みを2021年6月より開始しています。
京都事業所では、京都市に所在する上賀茂神社内にある「一般財団法人 葵プロジェクト」が主催する「葵育成プログラム*」に参加し、日本固有の植物であるフタバアオイを事業所の敷地内で育成しています。なお、育成したフタバアオイは2022年5月に上賀茂神社へ返納しました。返納したフタバアオイは、京都三大祭りの一つである葵祭の葵桂(あおいかつら)に活用される予定です。次年度以降も、葵育成プログラムの参加を継続するとともに、当社グループが貢献できる生物多様性の取り組みを検討し、推進していきます。

葵育成プログラム:上賀茂神社内の「葵の森」によるフタバアオイの育成は、鹿やモグラなどによる害獣被害や、異常気象などのリスクが高いため、外部(個人、企業など)でフタバアオイを育成するプログラム

写真:フタバアオイ

フタバアオイ

写真:フタバアオイの植替え作業

フタバアオイの植替え作業

写真:フタバアオイの奉納

フタバアオイの奉納