株式会社 GSユアサ(社長:村尾 修、本社:京都市南区。以下、GSユアサ)は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の航空機用先進システム実用化プロジェクトにおける、研究開発項目⑧「次世代電動推進システム研究開発」(下図参照)のうち、「軽量蓄電池」に関する研究開発に取り組んでいます。
このたび、本プロジェクトの3年目において、中間目標の一つである「400 Wh/kg級-リチウム硫黄電池の実証」に成功しました。

本プロジェクトの目的は、安全性が高く軽量・低コストの航空機用先進システムを開発し、次世代航空機に提案可能なレベルにまで成熟させることであり、次世代航空機の動力としてモーターおよび蓄電池などによる電動化が検討されています。GSユアサは、本研究開発において、セルの要素技術(電極、電解液など)の開発、および蓄電池制御システム、モジュール・パック構造の軽量化を進め、次世代航空機に求められる軽量蓄電池を開発しています。

軽量蓄電池には、高い質量エネルギー密度が求められます。その点でリチウム硫黄電池は、活物質である硫黄が1,675 mAh/gもの高い理論容量をもつことに加えて、低コストで資源的に豊富であることから、高エネルギー密度で安価な、ポストリチウムイオン電池として期待されています。一方、リチウム硫黄電池の実証においては、硫黄は絶縁体であるため、その電極反応における硫黄の利用率が低くなり、理論容量に近い高容量を得ることが困難である点や、反応中間体(多硫化物)が電解液へ溶解する結果、硫黄正極の性能が低下するという点の2つの問題を有していました。

そこでGSユアサは、要素技術開発の再委託先である関西大学とともに、①硫黄を担持する多孔性炭素粒子の研究開発、および②硫黄の溶解を抑制する電解液の研究開発において、硫黄を多孔性炭素粒子の細孔内に充填するとともに、安定な電極界面被膜(SEI)を形成する炭酸ビニレン系電解液を適用することによって、2つの問題の解決に成功しました。

また、GSユアサは、この要素技術の成果を基に、リチウム硫黄電池の設計および製造技術を開発し、小型セルの実証試験を実施した結果、「400 Wh/kg級-リチウム硫黄電池(電池容量8 Ah、質量エネルギー密度370 Wh/kg以上)」を実証しました(写真参照)。加えて、リチウム硫黄電池の蓄電池制御システム、モジュール・パック構造の開発においても、プロトタイプモデルの軽量化設計を完了し、試作・評価を開始しています。

なお、関西大学とGSユアサは、本件成果の一部を、2021年11月30日~12月2日にパシフィコ横浜で開催される「第62回電池討論会」(主催:電気化学会電池技術委員会)で発表します。

GSユアサは航空機用先進システム実用化プロジェクトにおける軽量蓄電池の実用化を通じて、次世代航空機の実現とともに、持続可能な経済社会のために、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

※ 本プロジェクトは8つの研究開発項目で構成される。航空機用先進システムのプロトタイプモデルを製作し、地上または飛行環境下で従来のシステムよりも優れた性能・機能などを有することの実証を最終目標としている。

■リチウム硫黄電池の外観(電池容量: 8 Ah)

■航空機用先進システム実用化プロジェクトの概要