株式会社 GSユアサ(社長:村尾 修、本社:京都市南区。以下、GSユアサ)は、全固体電池を実用化するためのキーマテリアルである硫化物固体電解質のイオン伝導度とともに、耐水性も高めた窒素含有硫化物固体電解質の開発に成功しました。この技術により、全固体電池の実用化を前進させることができました。また、全固体電池の製造時のハンドリング性の向上、および製造環境の維持コストの削減が期待できます。

全固体電池は、可燃性の有機電解液を難燃性の無機固体電解質に置き換えた電池であり、安全性が大きく改善されるため、次世代電池として多くの研究が行われています。全固体電池に使用される無機固体電解質は、大別して酸化物と硫化物があり、高いイオン伝導度を有する硫化物が大型電池に適しています。一方で硫化物固体電解質には、水と反応し、人体に有害な硫化水素が発生するという問題があります。これに対して、当社は第一原理計算などの計算化学を用いて、硫化物と組み合わせる最適な材料(窒化物およびハロゲン化物)を効率的に選定することで、高いイオン伝導度と優れた耐水性を兼ね備えた窒素含有硫化物固体電解質の合成に成功しました。今後は、この耐水性に優れた「窒素含有硫化物固体電解質」をさらに改良し、次世代電池である全固体電池を2020年代に実用化することを目指します。

GSユアサは、電動車をはじめとするさまざまな用途に向けた次世代電池の技術開発を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。

※「もっとも基本的な原理に基づく計算」という意味で、量子力学の基礎方程式であるシュレディンガー方程式を近似的に解くことによって、物質のさまざまな性質を計算すること。

技術改良のポイント

1. 窒化物を組み合わせることによる耐水性の向上
硫化物固体電解質に、代表的な窒化物である窒化リチウムを組み合わせることで、耐水性が向上することが報告されています。今回新たに窒化リチウム以外の窒化物を組み合わせることで、窒化リチウムと同等以上の耐水性向上効果があることを発見しました。また、耐水性の向上により、製造コストの低減や万一大気に触れた場合の有害な硫化水素発生の懸念の軽減などが期待できます。

2. ハロゲン化物を組み合わせることによるイオン伝導度の向上
硫化物固体電解質にハロゲン化物を組み合わせることで、イオン伝導度が向上することが報告されています。今回新たに開発した「窒素含有硫化物固体電解質」においても、ハロゲン化物を組み合わせることで、イオン伝導度が2倍以上向上することを確認しました。

3. 計算化学の活用による効率的な開発
第一原理計算を用いることで「窒素含有硫化物固体電解質」の開発速度が大幅に向上しました。今回、硫化物と組み合わせる30以上の候補材料の中から最適な材料を効率的に選定することができ、その結果、短期間で新たに「窒素含有硫化物固体電解質」の開発に成功しました。

<お知らせ>
この成果の一部を、11月30日から12月2日にパシフィコ横浜・ノースで開催される「第62回 電池討論会」(主催:公益社団法人電気化学会・電池技術委員会)で発表します。
https://sec.tobutoptours.co.jp/2021/denchi62/

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株式会社 GSユアサ コーポレートコミュニケーション部
TEL 075-312-1214