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プロジェクトストーリー01
project storyプロジェクトストーリー 01

リチウム硫黄電池の研究開発

電動航空機の実現に向けたプロジェクトにおいて、
400Wh/kg級リチウム硫黄電池の実証に成功。

outline

脱炭素社会の実現において、重要な技術の一つとされているのが蓄電池だ。なかでも、ポストリチウムイオン電池として注目が集まっているのが、安価で軽量、大容量が特長のリチウム硫黄電池である。GSユアサはかねてからリチウム硫黄電池に着目し、その研究を進めてきた。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の、電動航空機の開発を目指したプロジェクトに参画し、実用化に向けた歩みを進めている。

chapter01 安い、軽い、大容量という
“夢の蓄電池”の開発を
スタート。

リチウム硫黄電池は、正極に硫黄を、負極にリチウム金属を、それぞれ使用した電池である。これらの電極材料は、従来のリチウムイオン電池の電極材料と比較して、質量あたりの理論電気量が約10倍大きいため、軽量かつ大容量な電池の実現が期待できる。また、コバルト、ニッケル、マンガンのような高価な金属を使用しないため、原料コストを大幅に削減できる可能性がある。このような特長から、リチウム硫黄電池はポストリチウムイオン電池として非常に期待されている。GSユアサでは、このリチウム硫黄電池の可能性を以前から探ってきた。転機が訪れたのは2019年。NEDOの航空機用先進システム実用化プロジェクトの「軽量蓄電池」に関する研究開発の委託先として、GSユアサが採択された。電動航空機の機体を飛行させるための動力源として、軽くて大容量なリチウム硫黄電池が注目されたのだ。ここを起点に、リチウム硫黄電池の本格的な研究が口火を切った。

リチウム硫黄電池の研究開発

chapter02 実験を繰り返すも目標に届かず、
チームに焦りが見え始める…。

リチウム硫黄電池の大きな課題のひとつは、正極活物質となる硫黄を「使いこなす」ことだ。たとえば、リチウムイオン電池に汎用される電解液の多くは硫黄を溶かしてしまうため、そのまま組み合わせても十分な電池反応は得られない。硫黄を使いこなすための技術開発に向けて実験を繰り返すが、思うような結果は得られず、時間だけが過ぎていく。メンバーに焦りが見え始めた。プロジェクトの中間審査ステージゲートの目標である「400Wh/kg級-リチウム硫黄電池の実証」が未達だったからだ。目標達成の目途が立たず、プロジェクトの途中終了が迫っていた。しかしながら、繰り返した実験は無駄ではなかった。蓄積した膨大な研究結果の傾向を詳細に解析することで、硫黄の特徴を捉え始めた。そこで、現時点での状況と可能性を再度整理して、研究の精度を高めた。

リチウム硫黄電池の外観
図1 リチウム硫黄電池の外観

chapter03 諦めない心が研究を前進させ、
「硫黄を使いこなす」技術を開発。

研究開発は急速に進み、二つの画期的な技術を開発した。一つ目は、硫黄を含む正極活物質のデザインだ。ナノサイズの細孔をもつ多孔質炭素に硫黄を充填することで、硫黄と電解液の直接接触を防ぐ技術を開発した。この多孔質炭素や、硫黄が充填された後の硫黄炭素複合粉末の仕様に、とことんこだわった。二つ目は、カーボネート系溶媒をベースとした新しい電解液だ。この電解液は、正極活物質と電解液の界面に保護被膜を形成する役割を果たす。従来のエーテル系電解液を用いたリチウム硫黄電池に比べ、硫黄の溶出問題を大幅に改善できる技術となった。この二大技術を開発したことにより、プロジェクト開始から3年目、「400Wh/kg級-リチウム硫黄電池の実証」に成功した。それはプロジェクトチームの悲願であると同時に、電動航空機の実現を手繰り寄せる大きな希望となった。

多孔質炭素に硫黄を充填した複合粉末と硫黄粉末
図2 (左)多孔質炭素に硫黄を充填した複合粉末、(右)硫黄粉末

next goal

さらなる高みを目指し、世界をリードする存在へ。

本プロジェクトの次なる目標は、「500Wh/kg級-リチウム硫黄電池の実証」と、「実規模セルを用いた蓄電池システムの実証」だ。将来的にはエネルギー密度の向上だけでなく、サイクル寿命性能やレート性能、安全性の確保など、総合的な性能向上が求められる。なかでも、GSユアサらしい「安全な電池の確立」は欠かせない。現行のリチウムイオン電池のエネルギー密度が最大300Wh/kgとされるなか、GSユアサのリチウム硫黄電池は400Wh/kgのエネルギー密度を実証した。次なる目標である500Wh/kgを実証するべく、引き続き研究開発に尽力している。GSユアサは、世界をリードする存在として、新しい電池の研究開発に邁進している。

※国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「軽量蓄電池」は、関西大学に再委託し、関西大学化学生命工学部 教授 石川正司 先生と共同研究を行なっています。