平成13年1月5日

年 頭 の 辞

Y U A S A
取締役社長 大坪 愛雄

 20世紀最後の年であった西暦2000年の我が国経済は、設備投資関連の指標に力強さが見え、また長らく低迷してきた雇用者所得が増加し始めるなど、国内景気の一部には徐々に明るさを取り戻し、緩やかな景気回復軌道にありましたが、消費回復への道筋が未だ不透明であります。また、バブル経済の後遺症である「負の遺産」の処理が済んでおらず、12月も半ばを過ぎて株式相場が年初来安値を記録するなど、景気浮揚への盛り上りに欠けたまま力強さが感じられない1年でした。

 21世紀の最初の年である西暦2001年を迎えるに当たり、今一度基本に立ち返り、当社のあるべき姿、現状、当社を取り巻く外部環境、これらを踏まえた上で喫緊の課題として当社全従業員が一丸となって取り組まなければならないことをお話しして、年頭の辞といたします。

 当社は株式を上場し、株主による出資を基礎として事業を運営している企業であります。従って、株主価値の最大化を実現し、相応の利益配分を行なう使命を担っております。世間一般的に見て、最低でも年10%の利益配当を実現していくことが、上場企業としての責務であると考えます。また、従業員の皆さんがより快適な生活を送れるような待遇を提供し、お取引先の安心と満足、いわゆるCustomers Satisfactionを得られる様に対応していかなければならないと同時に、着実な成長をしながら企業として存続していかなければならないのです。これらの責務を全うするには、企業として体質を強め、確実に利益を出していかなければならないのは勿論ですが、従業員一人一人が会社の現況をよく把握し、事業部門全体の利益と自分の働きを結びつけて捉えることが肝要であります。

 当社を取り巻く環境に目を向けますと、電池、電源市場における競争は、国内同業者間のそれに止まらず、国境を超えた地球規模の企業間競争になっております。この競争は、高品質の製品を如何に低いコストで市場に提供できるかによって勝敗が決する、資本主義の原理どおりの競争であり、優勝劣敗がそのまま結果となって表れるものであります。即ち、品質、コスト、迅速な技術対応力、効率的な物流など総合的に強力な国際競争力を備えない企業は、もはやその存在すら危ういものになっているのです。
 このような環境の下、当社は中長期的戦略として、
  ・ 販売力の強化、物流の効率化を目指した自動車用電池と産業用電池・電源の販売会社の統合
  ・ IT、情報通信分野への事業領域の拡大
  ・ 海外事業展開のグローバルな視点からの見直しによるグループとしての総合力の強化
を掲げ、1998年以降早期退職制度を始めとする構造改革に着手し、2000年3月期には5期ぶりに復配を果たし、更に、昨年11月には、財務体質の改善並びに海外投資の選択と集中を主な目的として、当社にとって最も大きな資産であり、これまで連結決算の上で主要な役割を果たしてきた米国法人Yuasa、 Inc.の産業用電池部門を売却いたしました。従業員の皆さんは非常な努力をされ、経営としてもそれを多とするところではありますが、いずれの部門でも、過剰人員や不採算部門の縮小策に取り組むものの、構造改革は未だ道半ばであります。

 これら一連の方策は、一定の効果をあげましたが、あくまでも一時的なものであり、恒常的に企業体質を強化することができなければ、これまで採ってきた方策のすべてがあだ花になってしまうのをよく認識してください。 先ず、当社には後がないということを真剣に認識してください。激しい競争の場に置かれた当社が一息ついている暇などないのです。どうすれば勝てるのか、勝つための力をつけるには何をしなければならないのかを考え、その考えを迅速に行動に移しましょう。

 皆さんはそれぞれに能力や才能を備えていますし、それらは個々の時よりも集合体になることによってより大きな力を発揮します。そして、明確な目的意識、遂行意欲に裏打ちされれば、更に幾層倍にも大きな力になります。達成しようという強い意志を持ち、ベクトルを合わせて個々の力を結集し、組織の総力を挙げて目標に立ち向かえば大概のことは達成できるのです。幸い、ユアサグループは海外に潜在力を秘めた拠点を有しており、これらの拠点と合理的に連携を進めれば厳しい市場競争にも十分対応できます。グループの総力を結集して国境を越えた競争を勝ち抜いていくために、ユアサコーポレーションがグループ各社に対して模範を示し、リーダーシップを発揮していこうではありませんか。

 製造、技術部門から営業部門まで各部門が共通の目的意識を持ち、綿密な報連相を通じて一丸となった行動を起こしてください。他人、あるいは他部署に依存する甘えや、もたれ合うことは許されません。自分が動かなくても何とかなるだろう、といった考えは許されないのです。各部署、各人が為すべきことを的確に認識し、責任をもって実行し、それがまとまって組織の総合力として発揮されれば必ず会社は強くなります。

 皆さん、構造改革には一切聖域はありません。断固たる姿勢でのぞんでください。 21世紀に当社が力強く飛躍するために、私は持てる能力のすべてを出し尽くします。 従業員の皆さんも是非能力のすべてを出してくれることを強く期待いたします。

以上