株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション GSユアサレポート 2022 2022年3月期

表紙イメージ

価値創造

企業理念

革新と成長

GS YUASAは、
社員と企業の「革新と成長」を通じ、
人と社会と地球環境に貢献します。

革新を通じて
社会に役立つ価値を創造すること、
それが私たちの存在価値です

代表取締役 取締役社長 村尾 修

私たちの創り出す蓄電池は今日、暮らしや産業を支えるさまざまな社会インフラの中で重要な役割を果たしており、カーボンニュートラル実現が地球規模で重要な社会課題となる中で、「エネルギーを蓄え、必要な時に供給する」という機能を持つ当社グループの製品が果たす役割はますます大きくなっています。
今後もエネルギーマネジメントを通じて人と社会と地球環境に貢献する革新的な価値を創出し、持続的に成長し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

価値創造プロセス

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事業プロセス

機会とリスク

機会

  • 環境対応車の普及イメージ写真

    1 環境対応車の普及

    世界各国で環境規制が進む中、HEVやEVの普及が促進されています。
    当社は日系自動車メーカーを中心にHEV用リチウムイオン電池やアイドリングストップ(ISS)車用電池を供給しており、環境対応車へのシフトや自動車の電動化において重要な役割を担っています。

  • 再生可能エネルギーの拡大イメージ写真

    2 再生可能エネルギーの拡大

    近年、世界のエネルギー需要は増大しており、
    再生可能エネルギーの利用拡大が求められています。
    太陽光発電や風力発電によるエネルギーを有効活用するためには蓄電池や電源システムの導入が不可欠であり、当社グループの製品が大きな期待を集めています。

  • 電力・情報インフラの強化イメージ写真

    3 社会インフラ需要の増加

    電力供給が途絶えると現代社会の活動は立ち行きません。そのため、災害発生時を想定した電力バックアップ用電池・電源装置の重要性が一層高まっています。
    当社グループの製品は、さまざまな災害から社会の基盤となるインフラを守り、ビルや工場の事業継続にも貢献しています。

リスク

  • 原材料の規制イメージ写真 原材料の規制イメージ写真

    1 原材料の規制・価格高騰

    EU域内における鉛の使用規制の世界への波及、リチウムなど希少金属の価格高騰や供給不足が生じた場合、当社グループの生産活動に影響を与える可能性があります。

    対応
    • 12Vリチウムイオン電池の開発・製造
    • 希少金属を使用しない次世代電池の研究開発
    • 原材料価格の売価への転嫁
  • 市場環境の変化イメージ写真 市場環境の変化イメージ写真

    2 市場環境の変化

    自動車産業における環境対応車の急速な伸長、代替電池の台頭、若者の自動車離れやカーシェアリングサービスの普及拡大など、市場の変化を的確に捉えた戦略が必要です。

    対応
    • EV用リチウムイオン電池の研究開発を強化
  • サプライチェーンの変動イメージ写真 サプライチェーンの変動イメージ写真

    3 サプライチェーンの変動

    主力製品は原材料や需要先の市況に影響されやすく、一部の製品に用いるコバルトは紛争鉱物の一種でもあります。サプライチェーンの適正管理と需給の安定確保が重要です。

    対応
    • 複数購買によるサプライチェーンの安定化
    • CSR調達の推進
  • 人的資源の持続性イメージ写真 人的資源の持続性イメージ写真

    4 人的資源の持続性

    日本国内では、労働力人口の減少が企業に共通のリスクとして顕在化しつつあります。企業競争力の強化を図るためには、多様な人材が能力を発揮できる職場環境が重要です。

    対応
    • 人材開発、採用の強化
    • 多様な人材が働きやすい労働環境の整備

価値創造の源泉

  • 基幹である鉛蓄電池事業による安定した財務基盤イメージ写真

    1 基幹である鉛蓄電池事業による
    安定した財務基盤

    始動用鉛蓄電池は、当社グループの財務基盤を支えています。新車向けに加えて、車両の整備・点検時を中心に発生する補修向け需要による継続的な収益が得られ、また社会インフラを支えている、産業用やフォークリフト用の鉛蓄電池においても安定した収益が見込めます。

  • 基信頼と実績に基づく技術開発力と市場開発力イメージ写真

    2 信頼と実績に基づく
    技術開発力と市場開発力

    これまで培ってきた日系自動車メーカーとの関係を活かし、グローバル拠点網を構築してきました。お客様のパートナーとして需要地での開発・生産を続けています。
    今後は2022年に連結子会社化したトルコ拠点を活用し、中近東や欧州・北アフリカなどへ販売強化を進めます。また、タイにあるテクニカルセンターをはじめ、現地のニーズに応じて製品開発・市場開発を行っています。

  • リチウムイオン電池事業を支える高度な技術力イメージ写真

    3 リチウムイオン電池事業を支える
    高度な技術力

    世界初の量産型EV・HEVにリチウムイオン電池を供給した車載用リチウムイオン電池の先駆的メーカーとして、最先端の技術・製品開発に注力し、多くの日系自動車メーカーの車種に採用されてきました。
    グローバル市場で競争力を維持するとともに、日系自動車メーカーとのパートナーシップを強めてBEV市場への本格参入に向けて取り組んでいます。

  • パートナーシップが支えるブランド力と高い競争力イメージ写真

    4 パートナーシップが支える
    ブランド力と高い競争力

    当社グループの鉛蓄電池は、自動車用・オートバイ用の両市場で高いシェアを維持しています。鉛蓄電池は電動車を含む自動車1台に一つ搭載されているため、自動車用・オートバイ用鉛蓄電池の需要は維持されると考えています。また、バックアップ用・フォークリフト用については国内トップシェアを維持しています。

  • 企業理念を共にし、技術を維持・伝承する従業員イメージ写真

    5 企業理念を共にし、
    技術を維持・伝承する従業員

    グループ一体となった経営を推進し、発明家精神・チャレンジ精神を受け継いだ「革新と成長」を日々実践しています。「ものづくりエキスパート」教育研修会や改善チーム活動の事例発表会など、さまざまな活動を通じて当社グループのものづくりの技術を維持・伝承しています。

  • 企業に根付くCSRイメージ写真

    6 企業に根付く
    CSR

    CSRを意識した事業活動を根付かせ、コンプライアンス意識を浸透させることを目的に、2012年度から毎年、職場ごとにCSR職場ミーティングを実施しています。

トップメッセージ

村尾写真

エネルギー・デバイスの
新たな価値を創出し
持続可能な社会の実現に
貢献していきます

株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション
代表取締役 取締役社長
村尾 修

存在価値、価値観

サステナブルな事業で社会に貢献

  当社は設立から1世紀以上にわたり、蓄電池を中心とした多彩な製品を通して、社会に新しい価値を提供し続けてきました。歴史を振り返ると、20世紀初頭に無線通信の発展を支えた通信機用電源、発電設備が不完全だった日本の工業化黎明期に活躍した予備電源、戦後のモータリゼーションを加速させた自動車用・オートバイ用鉛蓄電池など、その時々の社会課題を解決する製品を生み出すことで自身も成長してきました。
  その精神は今も当社グループのDNAとして脈々と息づいています。例えば、当社が開発した電池は深海や宇宙などの過酷な環境下でも安定した性能を発揮しています。こうした他社に真似のできない唯一無二の製品を生み出す力は、最先端に挑み続けることで磨き上げてきたものであると考えています。その結果、自動車用・オートバイ用の蓄電池をはじめ、社会インフラ用の非常用電源、風力・太陽光発電所の蓄電システムなど、当社グループの技術と製品はさまざまなフィールドで人々の暮らしや産業を支えています。
  当社の事業はサステナブルとの親和性が高く、気候変動やエネルギー資源の問題解決が人類全体のテーマとなる中で、我々の社会的使命と責任はさらに大きくなっていくと考えています。エネルギーを蓄え、必要な時に供給するエネルギー・デバイスである蓄電池の役割がますます重要になると認識しており、その期待に応えていきたいと考えています。
  2004年の経営統合を契機に定めた「革新と成長」という企業理念は、「社会に貢献する新しい価値を創出し、それによって自らも持続的に成長すること」であると私は理解しています。当社グループが新しい価値を生み出し、第二、第三の柱を築いていくには、高い技術力や専門知見だけでなく、常にお客様や市場の声に耳を傾け、自らを変革し続ける柔軟な姿勢が不可欠です。私は「お客様にとっての嬉しさ」という言葉を念頭に置いて議論しています。新しい価値を創造していくには、常に提供される側の視点に立って考えることが重要であると、肝に銘じています。
  当社がこれからの社会に貢献していくためには、培ってきた電気を蓄える・使う技術のさらなる革新とともに、それらの技術を社会インフラとして広く実装・運用していくことが重要です。エネルギー・デバイスの開発・製造・販売から、エネルギーを社会全体で使いこなすためのエネルギーマネジメント、さらにその先にあるエネルギー資源循環にまで視野を広げ、すべての人々が「嬉しさ」を感じられる社会を創ることが、持続可能な社会の実現に繋がると考えています。

全社一体となって経営品質を高める

  「革新と成長」を語る上で、もう一つ大切なことがあります。私はモノづくりの会社として、お客様や社会の信頼を獲得し、長期にわたって成長していくために、まずは品質の維持・向上が重要だと考えています。製品の品質はもちろんですが、トータルクオリティマネジメント(TQM)を通じて、経営全体の品質を高めることを目指しています。
  そのため2015年の社長就任以来、私は「品質を中核とする経営」を掲げ、事業部門に横串を通す形で「品質統括会議」「改善事例発表会」「重要品質問題事例展」を定期的に開催してきました。現場の経験・ノウハウを、海外も含めた全社で共有するとともに、失敗から学ぶ機会・姿勢を重視してきました。
  例えば、改善事例発表会はスタート当初、品質関連部門や技術・製造部門の発表が大半だったのですが、今では販売や人事、理財部門などの参加も増え、品質を追求する取り組みが会社全体の業務プロセス改善に繋がっています。
  近年では開発・生産・販売・管理部門が一体となった取り組みが実を結び、市場でのクレーム発生率や工程内不良損失率は着実に減ってきています。さらに製品の品質向上はもちろんのこと、私が目指してきた業務プロセスを含む経営全体の品質が高まっていることを実感しています。

中長期的な成長に向けて

第五次中期経営計画の完遂

  中期経営計画最終年度となる2022年度の連結売上高は5,200億円、のれん等償却前営業利益は過去最高となる290億円、親会社株主に帰属する当期純利益は120億円を見込んでいます。成長分野である車載用リチウムイオン電池事業においては、(株)ブルーエナジー第2工場の稼働開始によってハイブリッド車(HEV)用リチウムイオン電池の生産能力を拡大し、需要に対応します。また産業電池電源事業では、2021年に新たに仲間に加わった(株)GSユアサ インフラシステムズとのシナジー効果をさらに高めていきます。自動車電池事業においては2022年5月に連結子会社化したトルコ拠点を活用し、欧州・中近東・北アフリカ向けの生産・販売体制の強化によって事業拡大を図っていきます。
  これらの施策を着実に進めることで、第五次中期経営計画で掲げた業績目標を達成します。

カーボンニュートラルを時代の変節点として

  ここ数年、カーボンニュートラルの動きが世界規模で加速しています。特に欧州や中国、日本では自動車の電動化や再生可能エネルギーの導入に向けた動きが顕著になっています。こうした潮流はサステナブルとの親和性が高い当社事業にとって間違いなく機会であり、成長への追い風になります。一方で、省エネ設備導入などの環境負荷の低減に費やすコストの増大や、主力事業としてきた自動車用の始動用鉛蓄電池の需要漸減といったリスクがあることも認識しています。
  その中で私は、このカーボンニュートラルの潮流を時代の変節点と捉えており、急激な市場環境変化の中で機会とリスクの両面をしっかりと見極めながら、各事業の「稼ぐ力」を高めていく方針です。中長期的な成長に向けて、大きくは次の3つの分野で成長戦略を推進していきます。

1.自動車の電動化への対応

  第一の成長戦略は、自動車の電動化への対応です。HEV用リチウムイオン電池の拡販と電気自動車(EV)市場拡大を見据えたEV用電池・次世代電池の研究開発に注力します。当社はさまざまな調査をもとに、時間軸・地域軸で差があるものの、2030年代半ば頃まではHEVが電動化の主流であり、それ以降はEVが主流になると予測しています。これまで当社は、第五次中期経営計画期間中はHEVにリソースを集中するという方針のもとで車載用リチウムイオン電池事業の強化を進めてきました。この結果、2021年度は黒字転換を果たすなど、着実に成長してきました。今後も2020年代後半にはHEV用リチウムイオン電池の生産能力を年間7,000万セルに拡大し、新車メーカーの需要に着実に応えていく見込みです。
  加えて将来の市場変化を見込んで拡大が予想されるEV用電池にもリソースを振り向けていきます。2022年4月には、EV用リチウムイオン電池の研究開発のスピードを上げるため、リチウムイオン電池事業部内にEV用リチウムイオン電池の開発に特化した組織を新たに設置しました。これまで培ってきた技術とプラットフォームを最大限に活かし、新車メーカーの要望を直接取り入れながら、数年後の納入に向けて高性能かつ高安全、高品質なEV用電池の研究開発を加速させています。同時にその先の未来を見据えて次世代電池の実用化に向けた研究開発にも取り組んでいきます。

2.強みを持つアセアン地域でのシェア・収益性を向上

  第二の成長戦略として、海外の自動車用鉛蓄電池市場では、アセアン地域での販売拡大に注力します。自動車の電動化が進展しつつありますが、アセアン地域を中心とする新興国では、経済成長に伴ってモータリゼーションが進み、自動車保有台数が増加することで、当面はガソリン車が主流の状況が続くことが予想されます。当社は新興国市場では当面、自動車用・オートバイ用の始動用鉛蓄電池を中心とした事業戦略を継続します。
  新興国市場では、当社の優位性をいかに維持・向上させるかが課題です。当社グループは日系自動車メーカーの海外展開に合わせて1960年代からアジアへ事業展開しており、シェアを拡大してきました。現在はアセアン地域に15の製造・販売拠点を有しているほか、地域のニーズをいち早く捉えて製品に反映できるようタイにテクニカルセンターを設けて技術開発に取り組んでいます。これまで培ってきた日系自動車メーカーとの関係を活かし、営業力をさらに強化するとともに、差別化のできるアイドリングストップ(ISS)車用電池などの高付加価値製品を市場投入し、収益性向上に繋げていきます。当社の強みであるグローバルな情報網を活かし、投資効率の良いエリアにリソースを傾けていきます。

3.カーボンニュートラル実現に貢献するモノ・コトの提供

  第三の成長戦略は、カーボンニュートラル実現に不可欠な蓄電池需要拡大への対応です。日本政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて全国各地で再生可能エネルギーの導入が進んでおり、これに伴って電力系統の需給調整に不可欠な蓄電池の需要も拡大が期待されています。また、各企業もカーボンニュートラル実現に向け、事業所のエネルギーをマネジメントするための蓄電池の導入を進めつつあります。産業電池電源事業はバックアップ用電池や電源装置を主力製品としていますが、電力系統の需給調整、事業所のエネルギーマネジメント分野のさらなる事業拡大を図るべく、車載用の開発・生産などを通して獲得したリチウムイオン電池の技術・ノウハウを今後はこの分野に活用し、より競争力の高い製品の開発に繋げていきます。
  また、バックアップ用、電力系統の需給調整用の蓄電池は電力インフラの一部であるため、適切な選定・設置はもちろん、安定稼働と最適制御のための保守運用が重視されることから、製品を持続的に活用するためのコトづくりビジネスも強化していきます。製品納入後にAIやIoTなどデジタル技術を駆使した予防保全や適切な更新を提案することで、継続的に収益を得られるビジネスモデルの確立を目指していきます。

経営基盤の強化

ESGへの取り組み、デジタル技術の活用を促進
E:環境

  持続可能な企業成長を実現していくには、各事業での成長戦略と同時に非財務の取り組みによって事業基盤の強化を図ることが重要です。
  当社は自社の事業活動に関わる環境負荷を低減することが企業としての重要な社会責任でもあると認識しています。2021年5月には「GY環境長期目標2030」を発表し、目標達成に向けた取り組みの1つとして、2021年11月に京都事業所において使用する電力のすべてを実質再生可能エネルギー由来に切り替えました。さらに2022年度から「インターナルカーボンプライシング制度(ICP制度)」を導入しました。設備導入に伴うCO2排出量を費用換算して投資判断に加えることで、CO2削減の効果を見極めながら、省エネルギー設備や再生可能エネルギーの導入などの低炭素投資を促進していきます。当社は事業におけるCO2削減の取り組みを通じて、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいます。

S:社会

  人的資本の強化にも重点的に取り組んでいます。当社の求める人材は、自分で考え、主体的に行動し、成果を生み出す「自律型人材」です。従来の方法や慣習にとらわれない業務プロセスの刷新、新技術の開発、新市場への参入など――それぞれの現場で従業員が「革新と成長」を実践することでこそ、新しい価値が生まれると考えています。
  こうした人材の育成・活躍を推進するために、多様で柔軟な働き方ができる職場環境や制度整備を進めています。特に働き方改革は、さまざまな企業価値の創出に繋がると考えています。例えば、デジタル技術を活用したリモートワークなどが挙げられますが、柔軟な働き方の促進に向けた環境整備を一層進めていきたいと考えています。
  また激変するビジネス環境に対応していくには、企業活動の各フェーズにおけるダイバーシティ&インクルージョンが最優先課題です。なかでも女性活躍推進については、「キャリア形成」と「ワークライフバランス」という二つの軸を同時に支援していくことで活躍の機会を広げ、管理職およびリーダー職の女性割合の向上を図っていきます。
  「ワークライフバランス」といいますが、私はライフを優先して「ライフワークバランス」といえるような環境整備を持続的に推進したいと考えています。

G:ガバナンス

  ガバナンスの重要テーマである取締役会の実効性は概ね確保できているという結果が出ているものの、社外取締役からの提言を中心に毎年課題を改善しています。また、理事・執行役員以上の役員レベルでの研修会では、現在の当社を取り巻く環境に対して、「革新と成長」がどう貢献するかについて議論しています。今後、ESGの取り組み強化に向けて、ESG指標と連動した報酬体系を検討することも重要テーマだと考えています。
  また、近年のサプライチェーンの混乱や自然災害の増加に伴い、2021年度より全社的な事業継続計画(BCP)プロジェクトをスタートさせました。生産効率の観点や顧客のみなさまへの影響も踏まえ、複数拠点によるリスク分散を進めています。

事業変革と価値創造に資するデジタル技術の活用

  事業基盤の強化としてもう一つ重視しているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進です。電池の需要予測システムの導入や工場内のエネルギー利用量の最適化を図るエネルギーマネジメントプロジェクト、研究開発部門のDXによる生産性向上プロジェクトなど、さまざまな業務でAIやIoTなどのデジタル技術の活用を進めています。また、従業員の基礎知識向上を図るため、DX教育を実施し、現場第一線からのアイデアを募ることでDX実現に向けて取り組んでいます。
  ただし、最先端のデジタル技術を活用してもそれがビジネスモデル変革や新たな価値創造に繋がっていなければ意味がありません。そこをしっかりと見極めながら、今後もデジタル技術の積極的な活用によって社内外に変革を起こしていきたいと考えています。

ステークホルダー
のみなさまへ

未来を見据えた「両利きの経営」の実践に努める

  私は昨今、改めて「両利きの経営」の重要性と難しさを実感しています。企業が社会に新しい価値を創出し続けるには、既存事業の競争力に磨きをかける「深掘り」と同時に、新たな事業機会の拡大に向けた継続的な「探索」が重要です。新たな事業機会とは、当社でいえば、例えばポストリチウムイオン電池やエネルギーマネジメントであり、資源循環も含めた事業機会です。
  こうした新領域の探索に必要な資金は、既存事業によってしっかり稼ぎ出さねばなりません。一方で既存事業も深掘りしていく必要があります。既存事業で獲得した収益を含めた経営資源のうち、どれだけを新規分野に投下しどれだけを既存事業の強化・拡大に振り向けるか、ステークホルダーのみなさまの理解も得ながら、バランスをとることが重要です。
  そこに決まった法則はありませんし、いくら確信があっても蒔いた種のすべてが実るわけではありません。当社グループの100年を超える歴史には、多くの革新があった一方で、当然失敗もありました。先人たちが失敗を糧にして、新しい事業に挑戦し続けてきたからこそ、今の当社グループがあります。成功するために今まで経験した失敗を糧にして、新規事業に挑戦し続けていきます。
  当社が「何を大切にするか」「何を成し遂げたいか」を明確に打ち出し、ステークホルダーのみなさまの「共感」を得ることが経営トップとしての私の使命であると考えています。今後もステークホルダーのみなさまの声に真摯に耳を傾け、対話を続けながら、豊かな社会の実現に向けた価値創造に挑戦していきます。引き続きご理解、ご支援をお願いいたします。

2022年8月

株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション
代表取締役 取締役社長
村尾 修

財務担当役員メッセージ

村尾写真

中長期的な視点をもって
最適な資本配分に努め
企業価値の向上を
目指していきます

株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション
取締役 最高財務責任者
松島 弘明

CFOの使命

冷静な視点とともに「思いやり」を重視

  2022年6月から最高財務責任者(CFO)に就いた松島と申します。私は経営統合前のユアサ コーポレーションに入社し、最初に配属された情報システム部門でシステムを通じて会社全体を見る目を培い、その後の約20年間は主に経理・財務・税務などで実務に携わってきました。またグループ会社への出向時には大手商社との共同プロジェクトをはじめ、最先端の蓄電池ビジネスに携わりました。そうしたさまざまな経験を、これからのCFOの仕事にも活かしていきたいと考えています。
  CFOの基本的なミッションは、財務という観点から企業の持続的な成長を支えることです。常に長期的な視点をもって、当社の企業価値向上に資する資本政策や財務戦略を着実に実行し、「革新と成長」を通じた社会貢献に繋げていきたいと考えています。
  財務責任者として経営資源の最適な配分を行う際には、常に冷静な目でリスクと機会をしっかり見極め、ダメなものはダメであるとはっきり示す必要があります。ただし、そこで私が重視しているのは「思いやり」です。私は毎期初のキックオフでは部下たちに必ず「思いやりを持ってほしい」と言ってきました。これは「単に優しくせよ」という意味ではありません。想像力を働かせ、相手の身になって考えよ、ということです。理財部門は、直接的に利益を生み出したり、製品をつくったりする部門ではありません。だからこそ各事業部門の成長戦略を理解したうえで、開発や生産、販売に従事している現場の声に耳を傾け、何に困っているのか、どう感じているのかを想像した上で、最適な財務施策を実行していくことが重要です。私自身も、冷静でありながらも常に「思いやり」を忘れないCFOでありたいと思います。

業績・財政状態

基礎固めを着実に完了させ
中期経営計画最終年度に臨む

  2021年度は全世界で新型コロナ禍が継続する厳しい事業環境でしたが、当社グループの連結売上高は、車載用リチウムイオン電池事業が大幅に販売を伸長させたほか、海外市場での鉛蓄電池の販売増などもあり、過去最高を更新する4,321億円となりました。営業利益については、原材料価格高騰や海外を中心とした物流費・人件費の上昇の影響を大きく受け、227億円となり、減益となりました。その中で戦略分野と位置付ける車載用リチウムイオン電池事業が黒字転換を果たし、成長フェーズに入ったことは、非常に大きな収穫だと捉えています。
  キャッシュ・フローの面で見ると、営業キャッシュ・フローは棚卸資産や売上債権の増加によって前年同期の358億円から129億円に減少した一方、投資キャッシュ・フローは車載用リチウムイオン電池増産に向けた設備投資を中心に前年度から100億円以上増額し、マイナス302億円となりました。この結果、2021年度のフリー・キャッシュ・フローは前年度から大きく下がってマイナス173億円となり、現金及び現金同等物の取り崩しと借り入れを実施して配当金の支払いなどに充当しました。
  ただし、キャッシュ・フローの悪化については新型コロナ禍におけるサプライチェーンの混乱が大きく影響したことなどによる一時的なものであり、今後の各事業での利益拡大と在庫のモニタリングによる適正化に取り組むことで早期に平時の状態に戻したいと考えています。
  これまで原価統括部門で国内外のコストの見える化を進めてきました。今後は原価低減を推進するため、バリューエンジニアリング(VE)活動を開始しており、開発や製造現場での意識啓発に向けて取り組んでいきます。
  2022年度は引き続き厳しい経営環境が予想されますが、各事業における成長戦略を着実に実行することで、売上高、利益ともに目標を達成できる見込みです。設備投資、研究開発費については2021年度をさらに上回る320億円、130億円をそれぞれ計画しており、有利子負債も900億円程度まで増加する見込みですが、財務健全性の指標である自己資本比率42%以上は維持できると予想しています。

資本効率

ROIC経営のさらなる浸透

  中長期的な視点をもって資本効率を高めていくことは、CFOの重要ミッションの一つです。資本コストを上回るリターンを生み出していくため、当社ではKPIとしてROIC(投下資本利益率)を導入し、グループ全社で事業単位での資産効率を強化することで稼ぐ力の強化に取り組んでいます。
  ROIC経営の浸透に向けて、これまでに役員研修を繰り返し実施してきたこともあり、経営幹部層では資本効率に対する意識改革がかなり進んでいます。一方、中間層や現場の従業員に対しては、社内教育研修を通じて徐々に理解浸透を図っていますが、日常業務の中で常に資本コストを意識するのは、なかなか難しい面もあります。
  そこで以前から社内各部門で日常的に実施しているTQM(総合的品質管理)活動とのコラボレーションによって、組織全体にROICを定着させていく取り組みを開始しています。TQM 改善活動とROICとを結び付け「この項目を達成すれば、ROIC値がこれだけ改善する」というように、各部門の従業員の課題実践がROIC向上に繋がるような好循環をつくっていきます。

投資・リスク管理

リスクをマネジメントして積極的な成長投資を継続
2つの委員会で投資判断の妥当性を担保

  企業としての稼ぐ力をより高めていくために、2023年度から開始予定の第六次中期経営計画でも成長投資が必要になると思われます。投資判断の妥当性を担保していくために、2021年度には従来からある設備投資委員会に加えて、事業アセスメント委員会という社内検討機関を新たに設けました。
  設備投資委員会は、開発、製造部門の役員を中心に構成されており、原則月1回、事業部門から上申される1億円以上の設備投資案件の妥当性を精査しています。各案件における目的の妥当性や投資金額の回収可能性、過去の設備投資の運用状況や投資効果などについて審議、検討を行っています。最近はこれらに加えてCO2排出削減などの環境面での評価なども取り入れた投資判断を行っています。
  事業アセスメント委員会は経営戦略室を中心に、理財部門に加えて法務、技術開発部門などの多様な専門知識・スキルを持つメンバーで構成されています。同委員会も毎月開催しておりM&Aなど設備投資以外の投資案件を審議するほか、大型案件の受注などについても合理性や妥当性・回収可能性を検討しています。また、コンプライアンス面や技術面での課題・問題点の検証も行うなど、さまざまな観点から確実なリスクチェックを行っています。

インターナルカーボンプライシング制度導入で低炭素投資を積極化

  私は財務とともにCSR部門も管掌しています。企業価値の向上という観点において、非財務面での取り組みもお客様や投資家から重要視されており、自社の活動についてステークホルダーのみなさまに伝えていくことも自分の使命であると考えています。
  特に世界の大きな潮流となっているカーボンニュートラルについては、当社事業にとっての非常に大きな成長機会であるとともに、事業活動におけるCO2排出削減に要するコストの増大などリスク面もしっかり捉える必要があると認識しています。当社グループは2019年度に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明して以降、国内外の拠点を対象に専門家の意見を聞きながら気候変動リスクに関する調査を実施しており、2022年5月に「気候変動におけるリスクと機会」など新たな情報開示を行いました。
  また当社は2021年5月に発表した「GY環境長期目標2030」において、2030年度までに当社グループの事業活動による温室効果ガスを、2018年度比で30%以上削減することを目標に掲げています。この目標の達成には、省エネルギー設備や再生可能エネルギーの導入などの低炭素投資が必要となることから、2022年度から「インターナルカーボンプライシング制度(ICP制度)」を導入しました。今後は各事業におけるさまざまなCO2削減施策を推進し、目標の達成を目指します。

人的資本への投資とDX投資を同時に推進

  企業の最大の経営資源である人的資本も重視しています。優れた人材の採用・育成や働きやすい環境整備などの人材投資をしっかり行い、高いリターンに結び付けていくことは言うまでもなく企業経営の基本です。
  ただし少子高齢化がますます進み、あらゆる人材の確保が困難になると予想される今後を見据えれば、多様な人材の確保・育成と並行して先端的なIoT、デジタル技術を活用した業務の合理化や効率化、いわゆるDXを同時に進めていくことも非常に重要だと認識しています。これは単純にアナログ作業をデジタルに置き換えれば済む話ではなく、それぞれの個人の業務にデジタル技術がしっかり落とし込まれ、革新的かつ地に足の着いた形で効率化や改革を実現していく必要があります。

株主還元

さらなる収益拡大で安定的な株主還元を継続

  当社は株主のみなさまに対する利益還元を経営の最重要課題の一つに位置付けています。原則として、連結業績と今後の成長に向けた内部留保、財務状況などを総合的に勘案した上で総還元性向30%以上を目安に株主還元を実施していく方針です。なお、株主のみなさまの利益を考慮して、総還元性向の算出はのれん等償却前当期純利益をベースにしています。
  2021年度の株主配当については、当期純利益は減益となりましたが、安定配当の観点から前年度と同額の1株当たり50円で実施させていただきました。なお2022年度の株主配当については、予想利益の達成を前提として1株当たり中間配当金15円、期末配当金35円、年間配当金50円とする予定です。
  経営統合から15年以上が経ち、当社の財務状況も格段に改善しており、事業の収益性も高まっています。一方で稼ぐ力をまだまだ高めていく必要があることも認識しています。今後も資本効率を高めつつ、中長期的な視点で収益の拡大と企業価値の最大化に努めていきます。ステークホルダーのみなさまには、引き続き当社グループへのご理解、ご支援をお願い申し上げます。

2022年8月

株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション
取締役 最高財務責任者
松島 弘明

中長期戦略と
パフォーマンス

気候変動への対応(TCFD)

当社グループは、気候関連課題が重要な経営課題の1つであると認識しており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) 提言への賛同を2019年12月に表明し、TCFDフレームワークに基づく気候関連の情報開示に取り組んでいます。2021年度からは、気候関連のリスク・機会を今後の事業計画に統合するプロジェクトを開始しました。分析に使用した気候変動シナリオには、1.5℃シナリオおよび公表政策シナリオ(3℃シナリオに相当)を採用し、短期(2025年度)、中期(2030年度)、長期(2050年度)の時間軸を考慮した戦略を立案しました。

特集 〜拡大する再生可能
エネルギー市場への挑戦〜

特集イメージ写真
  • 1豊富な実績をベースに
    「3つの新」に挑戦し、
    ニーズに対応
  • 2強みであるネットワーク&
    フットワークを活用
  • 3第二の柱として
    常用分野のビジネスを育成

事業ポートフォリオ

自動車電池事業

情熱とスピードをもって
市場の多様なニーズに
応える

株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション  
代表取締役 専務取締役
株式会社 GSユアサ 代表取締役  専務取締役 
自動車電池事業部長
澁谷 昌弘

  自動車電池は、世界中で自動車の走行を支える重要な役割を担っており、その存在価値はカーボンニュートラル社会の実現に向けてますます高まっています。縁の下の力持ち的な存在ですが、各地の気候や市場特性に合わせて進化を遂げ、なかでも自動車用鉛蓄電池は進化し続けています。例えば、自動車の燃費向上に繋がるアイドリングストップ(ISS)車用電池には、高い耐久性・耐候性や充電受入性能が求められますが、当社は新車メーカーの要請に応える製品開発により、環境負荷の低いISS車の普及に貢献しています。また、BEVなどの電動車にも、補機用として鉛蓄電池が搭載されており、電動化が進んでも、自動車を支える存在であり続けます。これらは私たちの技術革新の成果であり、企業理念の「革新と成長」に通じるものです。
  お客様である新車メーカーと同じ目線で、情熱とスピードをもって市場の多様なニーズに応えていくことが、「革新と成長」に繋がる当社の企業価値だと考えています。また、従業員のモチベーション向上にも取り組んでおり、エンゲージメントを高めて成長機会を与え続けることが、会社全体の企業価値を向上させると考えています。

自動車電池(国内)

  • 売上高構成比グラフ
  • 売上高グラフ
  • 営業利益・営業利益率グラフ

自動車電池(海外)

  • 売上高構成比グラフ
  • 売上高グラフ
  • 営業利益・営業利益率グラフ

産業電池電源事業

防災・減災や
カーボンニュートラルなど
地球規模の課題解決へ
役割が拡大

株式会社 GSユアサ  取締役
産業電池電源事業部長
谷口 隆

  産業電池電源事業に長く携わってきて、その社会における重要性がますます高まってきたと実感しています。私が入社してから今日まで、産業用電池電源装置の主な役割は停電時のバックアップです。
  バックアップ用電池電源装置は設置後いつでも問題なく電気が供給できるよう、保守・メンテナンスされている必要があると考えます。なぜなら停電時に電力ネットワークが復旧するまで電気を供給して、システムの健全性が担保されることは極めて重要だからです。例えば、2019年の房総半島台風では、被害を受けた千葉県南房総市へ蓄電池を持って駆けつけ、地域住民の頼みの綱である防災無線を機能させたことがありました。最近は温暖化の影響のためか自然災害が頻発・激甚化していますが、そういう時こそ電気が必要であり、その思いをさらに強くしました。
  また、近年は再生可能エネルギーを活用した電力ネットワーク網自体の安定化や余剰電力の貯蔵など、カーボンニュートラル社会の実現に必要不可欠なキーデバイスとして、蓄電池が世界から注目されています。そのようなことから、当社の提供価値は地球規模の課題解決の役割を担うレベルに拡大してきたと認識しています。

産業電池電源

  • 売上高構成比グラフ
  • 売上高グラフ
  • 営業利益・営業利益率グラフ

車載用リチウムイオン電池事業

先駆的な製品開発で
培った知見を活かし
企業価値の提供に
繋げる

株式会社 GSユアサ  常務執行役員
リチウムイオン電池事業部長
河野 健次

  これまでHEV用・PHEV用のリチウムイオン電池を手掛けてきており、量産車種に世界で初めてHEV用リチウムイオン電池を供給するなど、燃費性能に優れ、CO2排出抑制に有効なHEVの普及に大きく貢献できたと自負しています。私自身、HEV用リチウムイオン電池の開発から(株)ブルーエナジーの立ち上げ、その後軌道に乗せるまでの10年ほどを最前線で経験してきたことを誇りに思っています。
  新車メーカーとともに製品開発を続ける中で、量産技術や製品化のプロセスをはじめ、多くのことを学び、成長してきました。業務プロセスや製品化のプロセスのどちらにおいても、「進化」と「深化」が大切だと思っています。テーマを深掘りして製品を創り上げていく経験の積み重ねが、従業員、そして組織全体の力を高めるという好循環を生み出しています。
  今後も蓄電池はエネルギーとしてますます社会で必要不可欠な存在になりますが、その中でも私たちの事業における責任は重大です。これまでの経験・ノウハウを活かし、私たちに期待される役割が企業価値に直結するという想いで、さらなる社会への貢献に向けて取り組みます。

車載用リチウムイオン電池

  • 売上高構成比グラフ
  • 売上高グラフ
  • 営業利益・営業利益率グラフ

PDF版

GSユアサレポート2022

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